遥かなる太陽の王国 その6

スペイン5日目。
この日はレンタカーでロンダという町に向かう。

この町には、古い古い巨大な水道橋が深い渓谷にかかっている。
その景色を、どうしても見たかった。

永いときを経た巨大な建造物は、なんでこうも心をつかむのだろう。



しかしロンダへ向かう道は平坦ではなかった。
レンタカーを借りるのに、まず四苦八苦した。
カウンターのお姉さんの英語はつたなく、こちらの交渉役の父親は耳が遠く聞き取れない。
簡単なやりとりならばともかく、書類を出せ、追加の保険をかけるか、かけない場合のリスクはどうか、ナビの使い方はどうすればいいのか、などとなるとお手上げ状態。

普段の二倍くらいの時間をかけて、なんとか7速のマニュアル車を借りられた。



少し筋から離れる話になるが、今回、両親とスペイン旅行にきて、改めてつよく実感したのは、親との関係の変化だった。
力関係の変化といってもいい。

今まで親と海外旅行に来ると、ほとんどすべて親の手配で物事は動いていった。
父親は英語が堪能で、母親は旅行の計画を立てるのが好きで、あまり労を惜しまず宿を取ったり、交通の手配をして旅のマネジメントをしてくれていた。

食べるところも、泊まるところも、行くところも、どのように行くかも、そこで何が必要かも、すべて親がかりで、幼かった私や弟はただただそれに乗っかって色々な国に連れて行ってもらっていた。


けれど今回の旅は、その多くが私の役目になった。


泊まるところや交通手段は日本で大枠の手配を済ませていたけれど、その都市について、地図を見て、どこに行きたいか、どのように行けるか、書類は何を揃えなければいけないか、どこで何を食べるかの選択肢や手配は、大半が私に任された。

ホテルや交通機関との実務的な意思疎通は、英語の語彙が豊富だけれども耳が遠い父親よりも、なんとなくその場で話されることを予測して、身振り手振りを加えながらやりとりができる私の方が向いていた。


私が30を超え、そして、親が60を超える、というのはこういうことなんだ。



閑話休題。


ようやく借りられたマニュアル車に乗り込んで、早速困った。
どのようにエンジンをかけられるのかがわからない。
取説を引っ張りだすも、全てスペイン語でイラストは入っているものの、必要な操作が探し出せない。


なんとかエンジンをかけて走りだしても、地下の駐車場から上がっていく狭く急な坂道では、横をぶつけそうになる。滑り落ちそうになる。
後ろの車が、狂ったようにクラクションを鳴らす。
エンジンの焦げる嫌な匂いが車の中にまで漂う。



この時点で私と母親は震え上がり、もうレンタカーを返して、バスで行こうと提案したが、運転役の父親は「大丈夫だ。どうにかなる」といって聞かず、ものすごい速度で車が走る右側車線の道路につっこんでいく。

なんとかスクランブル交差点を抜け、ロンダに向かう平坦な一本道に出るも、片道一車線ずつの広くない道路で、お互い100キロ近く出してすれ違っていくので、助手席に座っていると生きた心地がしない。

途中休んだカフェつきのガソリンスタンドでは、バックの方法がわからないことがわかって壁に激突しそうになり、私と父親で、なんと手で車を押し返し、試行錯誤してバックの仕方をなんとか探り当てたりもした。



抜けるような青い空に、風車が周り、遠くには白い壁の村を見晴かすのどかな風景に、天国へのドライブ感を存分に味わいながら三時間弱。



ようやくロンダの街についた時は三人共ヘトヘトで、帰り道もあることを思うと、私はここに車で来ようと提案したことを、心底後悔していた。


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