はたらく場でのカムアウト事情

去年の五月に転職したとき、心に決めていたことがあった。



ここではパートナーと住んでいることをオープンにしよう。



そして、叶うことなら、パートナーの性別もオープンにしよう。



***



前の会社では、恋人ができた、と言ったときに根掘り葉掘りつっこまれ、それに対し嘘を重ねることが嫌で、「恋人はいない」で通していた。


男はいないのか? 結婚は? 出産は? そういうことをなんの躊躇いもなく、社長や、役員がからかい混じりに話題を振ってくるような会社だった。

セクハラだ、という指摘など、一笑に付される。
私もあえて目くじらをたてようとも思わなかった。
こんなのは普通の会話の一環だ。



そういう環境の中、会社という場には、「恋人と住んでいる」という事実より、「女性と住んでいる」という事実をオープンにしていた方が、いざという時に、困らない、と判断していた。




けれど、「パートナーがいない」という設定は、日常のそこここの何気ないシーンで、思いの外面倒くささをもたらしていた。


何度も東海を訪れる理由とか。
有給をとって、少し長い旅行にいく相手のこととか。
休みの九割は予定がある状態とか。
予定なく飲みにいくのはなるだけ避ける平日の夜とか。
終電を逃して、泊めてほしい、という同僚の依頼をむりやり断ったこともある。



ただ一言、「東海出身で、同居してるパートナーがいるから」といえば納得される諸々に、それぞれ変な理由をつけなければいけないことに、私は心底、飽き飽きしていた。




パートナーシップとは、真に生活に他ならない。


同時に、会社での人間関係とは、なんと私的な情報開示を伴うものだろう。



***



「ヨコさんは、パートナーはいるの?」



新しい職場で働きはじめて、数日経ったランチで、同じグループの同僚二人にそう問われたとき、私の開示する範囲は決まったようなものだった。



「彼氏はいるの?」と聞かない、そのリテラシー。


それは、彼氏、ではなく、結婚相手、である可能性を含む為だったとしても、その言葉選びは心地よいものだった。


相手はどんな人か、という問いかけに幾つか答えた後、結婚の予定はないのか? という問いに、ないですねえ、と答えた言葉に対する切り返しも、私の気持ちを固めた。



「そうなんだ。それはなにかそういう主義や理念があるから?」



「いや、パートナーが女性なので、今の日本の制度的には結婚が出来ないんですよ」



「あ、そうなんだ! なるほど。
 そういえば、最近、ディズニーで女性同士が結婚式をあげたっていう写真をツイッターで見たな。あれはすごく綺麗だったし、ステキだった」




その、感動的な情報感度たるや!




***



そこから、上司も含め、同じチームでプライベートを交えて話す機会のある人には、そういう話題に触れる度に、それぞれに伝えた。

伝える言葉も、かえってくる言葉も、少しずつ違っていたけれど、私が誰をパートナーとしているかという情報は、ひとつのごくなんでもない情報として、なめらかに浸透した。

そして私が直接話した記憶のない人が、私のパートナーのことを知っている、ということも、ほぼない。



この会社で、ストレスフリーに働けている理由は幾つもある。
その理由の一つは間違いなく、この「誰と住んでいるか」を親しい同僚や上司が知っていることだ。
私はそのことを、ほんとうに嬉しく感じている。



今年の五月、新しい会社で働きはじめて、丸一年が経ちました。



にほんブログ村


関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

ヨコ

Author:ヨコ
どたばた働き、美味しいご飯をぱくぱく食べ、5歳上の彼女とのお付き合いはのんびりまったり、一緒に楽しく暮らしております。

ランキング・コンタクト

ランキングに参加しています

メールフォーム

メールはこちらからどうぞ~。

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム