あの日

一年前のあの日は、私は営業で外出してた。

金曜日で、次の日は二人で伊豆へ旅行に向かう予定で、とても楽しみにしていた。


浜松町の小さなうどん屋さんで、遅いお昼を食べて、お会計をすませ、
外に出ようとしたときだった。
いきなり揺れはじめた。

揺れは、どんどん大きくなって、道に飛び出したら、目の前のビルが
軋んで揺れて、隣同士ぶつかりそうになっていた。
信号機は大きくたわんで、折れるんじゃないかと思った。
ただ、足をすくませて、眼前の光景を眺めていた。


あれは、たった震度5の揺れだった。




携帯はすぐに通じなくなって、直後にあおちゃんと送りあったメールは、
何時間か後にお互いの携帯に届いた。

ネットは繋がり続けたので、mixiとブログにアクセスした。
そこでうすぼんやりとわかりはじめたのは、震源地は北の方で、
しかもかなり状況は悪いということ。

けれど、外に一人でいると情報は本当に頼りない量でしか手に入らず、
私達が生身で把握できるのは、目に映る限りのこと、手の届く限りのことなんだって痛感した。


それでもなんとなく、電車も電話もすぐ繋がるようになると思っていて、
浜松町の駅中の本屋で立ち読みしてた。

数時間たって、これは全く話にならないとようやく気づいて、公衆電話の列にならんだ。

会社に連絡がついたのは17時位で、会社のメンバーの中で安否確認がとれたのは
最後から二番目くらいだったらしく、自分の状況判断能力の低さに愕然とした。

帰れるなら帰れ、と指示を出され、しばし悩み、
歩き始めて向かったのは、自分の職場よりも近い、あおちゃんの職場。

ヒールは足に厳しく、たどりついた時には不安と寒さもあってへとへとだったけど、
あおちゃんの顔が見れて、泣きたいくらいにほっとした。
あおちゃんは職場をしばしば抜け出して、ビルの地下でへたっている私に、
食べ物と情報を運んできてくれた。


夜中、電車が動きはじめたニュースを受けて、二人で動きはじめた線を乗り継いで家に帰った。
流石にすごい混雑だったけど、皆なんだか静かに乗りあっていた。


家について、改めてテレビをつけて、ようやくはっきり、何が起きたかを知った。
この頃ようやく親とも連絡がついた。


自分達の、幸運を思い知った。


画面にしばし釘付けになってから、我に帰って、一度テレビのスイッチを切って、
カレーうどんを作って、あおちゃんと二人で食べた。

風呂に入って、冷えた体を温めて、二人で眠りについた。


伊豆には、結局、この一年行かなかった。






日々を送る中で、私は確実に忘れていっている。

あのとき感じた、衝撃も、感謝も、祈るような気持ちも、なにも力を持たないことへの歯痒さも。


でも、この日のことは、くりかえし、きちんと思い出そう。
否応なしに、思いや強さが、形を変えてしまったとしても、なにが起きたかを、
そして、私がそこで何を感じたかを。

そして、隣にいる人の手をきちんと握って、今ある有り難い生活を送ろう。


あの日のあとを、私は生きている。




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コメント

1 ■無題

昨日から今日まで初めて支援活動をしました。

日常って本当に凄く恵まれてて有り難くて幸せな事なんですね。

もっと大切にする
  • 2012-03-11 18:44
  • URL
  • 料理人 #79D/WHSg
  • Edit

2 ■はじめまして

桃さんハチさんとこから来ました。どうぞよろしくm(__)m
あの日のことは私も強烈に覚えています。木の葉のように流れていく車やコンテナや船…テレビの向こう側といえ勝手に涙が出てきました。
私も自分が無力であることを感じています…風化させることなく生きていかなくては行けませんね。とりあえず…募金してます!
  • 2012-03-11 23:23
  • URL
  • シン侍 #79D/WHSg
  • Edit

3 ■無題

読んでいてなんだか涙が出てきてしまいました・・・

たった震度5でも、体験したことないような揺れでしたよね・・・
本当に恐かった・・・余震もすごかった・・・
震災直後は自分は楽しい事とか贅沢とかしちゃいけないんだとか、自粛に囚われてしまってましたし・・・
あの一瞬で全てを変えてしまいましたよね。
でも忘れずに、これからの日々を大切に生きましょうね!!
  • 2012-03-11 23:51
  • URL
  • みきはうす #79D/WHSg
  • Edit

4 ■はじめまして

まったく同感だったことと。

あの瞬間いらっしゃった場所が、僕があの日6時間かけて目指した我が家の半径数百メートル以内であることから、コメントさせていただきました。

僕も、あの日行く予定だった場所と行った場所には、一年間、足を運べませんでした。

今日、やっと、あの夜、遅い遅い夕食を採った中華屋さんに入ることができました。

忘れてはいけない。

でも、進んでなければいけない。

明日も、元気で、頑張りましょう。
  • 2012-03-12 21:58
  • URL
  • えるぼん #79D/WHSg
  • Edit

5 ■Re:無題

>料理人さん
素敵。
また話聞かせてね。

当たり前に感謝するって忘れがちで難しいけど、
心がけていきたいなと思います。
  • 2012-03-13 23:51
  • URL
  • ヨコ #79D/WHSg
  • Edit

6 ■Re:はじめまして

>シン侍さん
ようこそいらっしゃいませ!

募金、私もちゃんとしていきます!
献血もまだいってない!

出来ることは小さくてもあるんですよね。
  • 2012-03-13 23:52
  • URL
  • ヨコ #79D/WHSg
  • Edit

7 ■Re:無題

>みきはうすさん
うん、自粛にとらわれた、あの空気も辛かったですよね。
テレビからは延々ACが流れ続けて、異様な雰囲気で、
毎日神経がぴりぴり緊張していた気がします。

あれから回復していないことも本当に多くあるんだけれど、
きちんと暮らせる私たちは、きちんと暮らしながら、
感謝を忘れたくないって改めて思った日でした。
  • 2012-03-13 23:54
  • URL
  • ヨコ #79D/WHSg
  • Edit

8 ■Re:はじめまして

>えるぼんさん
はじめまして! コメントありがとうございます。

私がいた場所に向かわれていたんですね。
東京タワーは私にとっても目印でした。

忘れてもいけないけれど、足を止めるのも違う。

寒い日は続きますが、春はもうすぐ。
元気に頑張っていきましょう!
  • 2012-03-13 23:55
  • URL
  • ヨコ #79D/WHSg
  • Edit

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Author:ヨコ
どたばた働き、美味しいご飯をぱくぱく食べ、5歳上の彼女とのお付き合いはのんびりまったり、一緒に楽しく暮らしております。

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