すぐ隣の違う世界

月に一回位のペースでごはんを食べにいく、仲のいい男友達がいる。


出会ったのは4年位前で、その頃、彼はハンサムな女子だった。


レズビアンの友達経由で知り合ったのだけど、その子自身は、
ビアン、というよりは、バイのようだった。
あまり性別にこだわっていないようにみえた。

自由で、さばけてて、明るいけど、暗くて、会話のテンポがよくて、
聞き上手で、プロ意識が高くて、だから話しててとても面白い。
これは友達になりたいなー! と、例によって例の如く、
積極的にアプローチをして、首尾よく友達になった。

***

ある夏の日に待ち合わせてたら、声がやたらとかすれてて
「風邪?」と聞いたら、「声変わり中」と笑う。

冗談かと思って、「年、いくつだったっけか」と返したら、
「ホルモン打ってるんだよね」といわれた。

えええ、そういうことだったの? ってびっくりした。

一瞬、ちょっと言葉をなくして、それからぽつぽつと、
「どうしてそうしようと思ったのー?」から始まって、
色々とつまらない質問をした気がする。
彼は、なんでもないように、丁寧に答えてくれた。


LGBTと一つ言葉に括ってみても、世界は近いようで遠い。

私の周りにはそれまで、性別を実際に変えた友達はいなかった。

友達が、ちょっと遠くなってしまったように感じて、一瞬ドキっとした。

でも、それは大概気のせいで、その前も、後も、変わらず私は、
「彼」と気軽に誘いあい、会えば、くだらない話も、真面目な話もして、
げらげら笑う。


***


この間、彼がFtMのオフ会で知り合った人と一緒に、三人でご飯を食べた。

FtMの人とご結婚されたパートナーさんの女性で、
ふっくらと笑う笑顔が若いけれど、お母さんらしかった。

今のパートナーさんと付き合ってる期間が、私たちと同じくらいだったので、
「私と彼女が付き合い始めた期間と同じくらいですね~」なんて自分たちの話をする。
友達も、「ヨコちゃんとこの彼女さんって~」と、私たちの話をする。

にこにこ笑いながら話していた彼女がふと私に、「結婚はされないんですか?」と聞いた。

え? と、ちょっと戸惑ってから、「現行法だと無理ですねー」と答えた。

「あーまあ、結婚しなきゃってもんでもないし、考え方は色々ですもんね」と彼女。


……あれれ?



その後も、パートナーとしてどんなとこが合うのが大事かー、なんて
話が続いてたので、私もあおちゃんのことを、「付き合ってる人」といったり、
「彼女」といったりしながら、会話に何度か出していた。

三時間くらいのんびり談笑して帰り道、別方向の友達と別れて、
彼女と二人きりになって、電車の中、色々他愛ないお喋り。

そして、私の抱えていた疑念への決定打は、するっと打ちだされた。


「ヨコさんは彼氏さんとはどこで知り合われたんですか?」


あー、やっぱりそう思ってるよね?


そう、ずっと思って喋ってたよね!


改めて「私の付き合ってる人は、女性なんですよ~」と、彼女の目を見た。


彼女は大きく目を見開いて、
「あ、そうだったんですね! あ、だから彼と友達なんですね!!」
と、合点がいった、というように頷いた。


そして私も、その瞬間に自分の勘違いを思い知った。


FtMのパートナーさんだから、セクシャルマイノリティの世界に、
近しいところに生きていて、意識を持っているように思ってた。


当り前のように、私のことをレズビアンであると思うだろうと、
思い込んでた。


そして、その前提事項がないと、幾らハッキリ「彼女」っていってても
あんがいと、聞き取れないんだ、と知った。


***


世界は色々と、近いようで遠い。


すぐ隣に感じられても、そこはもう、私の当たり前は全然当り前ではない世界。


私たちの間で話されている言葉は、共通なようでいて、
今まで生きてきた上で培われた「前提」という認識の、
高く透明な壁で分断されている。


壁自体は、柔らかいことも固いこともあるけれど、まず存在に気がついて
それを破らなければ、言葉が本当には通じないことがある。



わかっているようなのに、ふとすぐに、忘れてしまうことの覚書。



にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト

コメント

1 ■レズビアンにいろんな人がいるように

それ以外のカテゴリーにもいろんな人がいますよね。当たり前だけど。

トランスジェンダーについてはまだまだ勉強不足ですが、今回記事になったので今おもうことを少しだけ書きます。

SRSを経て戸籍を変更した所謂完成度が高い当事者の中には、元の性別を封印する為に敢えて、オフ会等は参加しない方も少なからずいらっしゃるそうです。

そういった行動を指す「埋没」という用語があるみたいですが、、、

冒頭ではいろんな人がいるって言ったしそのいろんな人と出会いたいので、自前の透明で高い壁はいつでも柔らかくしておきたい。

けれど埋没しておられる方々は不可視なだけに、出会う事はまず無いだろうな。

近くて遠いってよりは、遠くて尚遠いって感じです
  • 2012-02-05 12:42
  • URL
  • 料理人@生涯一レズビアン #79D/WHSg
  • Edit

2 ■Re:レズビアンにいろんな人がいるように

>料理人@生涯一レズビアンさん
Tの人は、パスして埋没出来るのであれば、
むしろ他の当事者とは距離を置こうとする人は
たしかにいらっしゃるでしょうね。

遠くて、たしかに、なお遠いのかもしれません。

彼に会えて、友達になれたことも
本当に嬉しいと思っていたけれど、
そこから更に広がる輪があることは
さらに恵まれたことなんだなと思います。
  • 2012-02-05 21:16
  • URL
  • ヨコ #79D/WHSg
  • Edit

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

ヨコ

Author:ヨコ
どたばた働き、美味しいご飯をぱくぱく食べ、5歳上の彼女とのお付き合いはのんびりまったり、一緒に楽しく暮らしております。

ランキング・コンタクト

ランキングに参加しています

にほんブログ村

人気ブログランキングへ

フォローミー
yoko_tuzukuhibi

メールフォーム

メールはこちらからどうぞ~。

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム